進路
福祉経済学という学問を掲げていたゼミを専攻していた。
福祉と経済は両立できるのか?という点に興味があったからだ。
何の結論も出ず、モヤモヤした状態で就職活動に突入した1995年。
バブル崩壊後の1990年代中盤には、その時代背景も有って、新鋭の起業家を
囃し立てる風潮があった。有名どころのソフトバンクの孫正義を筆頭にして、
パソナの南部靖之、ワタミの渡邉美樹、HISの澤田秀雄などが居た。そして
グッドウィルグループの折口雅博がいた。
この折口のグッドウィルグループ傘下に、当時訪問介護の最大手であった
コムスンという会社があった。コムスンは厚生省の全面的なバックアップも
あって大いに取り上げられ、バブル崩壊後の雇用の受け皿にもなっていてた。
就活時には当然このコムスンを始めたとした福祉系企業が気になっていたが、
何となくこの業界へ進むのを止めた。やっぱりきな臭いニオイがしたのだ。
どうして儲かるんだ?!儲ける為に福祉を使うのか?!と感じたのだ。
そして2006年、コムスンによる介護報酬不正請求事件が明るみになる。
あれほど癒着していた厚生省からも見放され、2007年にはすべての事業を
ライバルのニチイ学館などへ譲渡して、2年後の2009年に会社は解散する。
やっぱり福祉と経済は両立しないんだと思いながらも、悔しかった。直接的には
自分に関係が無い事件だったけど、この一連の報道は悔しくて見るのも嫌だった。
福祉と経済の両立を夢見てこの業界へ飛び込んだ多くの人たちを裏切った。その
コムスン従業員の平均年齢は43.5歳で月給平均は17万2400円だったらしい。
資本家と奴隷という構図を福祉という色メガネで誤魔化して、ただ単に
グッドウィルは金儲けをしただけだ。支援したのは厚生省の役人たち。
そこにきて社名のgood willは日本語で“良い意志”。本当に胸糞悪い。。
この感覚が今でも私の根底にあるし、これから先もずっとある。
だからこそ、真っ当なことをしてお客様から妥当な対価を受け取れる
現在の仕事に就くことが出来て感謝している。偶然の運命に感謝している。